
知る人ぞ知る、TOC(制約条件の理論)をプロジェクトマネージメントに適用した理論を小説として説明した本です。
著者エリヤフ・ゴールドラットはイスラエルの物理学者ですが、「ザ・ゴール」でTOCを紹介し、一大ムーブメントを起こした人です。「ザ・ゴール」では生産管理におけるTOCが語られています。日本人にTOCを知られてしまうと危険だからと、日本語版の出版がなかなか許されなかったという話もあります。TOCとは一言でいってしまえば、「ボトルネックを見つけてそれに合わせて全体を最適化していく」というものです。
その後、TOCは思考プロセスにも応用され、この「クリティカルチェーン 」ではプロジェクトマネージメントに応用されました。
今、日本ではプロジェクトマネージメントが大流行です。プロジェクトマネージメントといえば、PMIのPMBOKが有名です。私もPMBOKに準拠するPMPを取得しましたが、PMBOKがプロジェクトマネージメントをすばらしく体系化していることは間違いありません。でも・・・。
あれをすべて適用してプロジェクトを管理するのは少し敷居が高くないですか。また、個々のフェーズにおける方法論までは示してくれません。
「クリティカルチェーン」では、作業期間見積もりにおける安全のための上積み(セーフティ)や、作業期間がたくさんあってもギリギリになるまで作業を始めない「学生症候群」等、耳の痛くなるような身近な問題の改善が語られています。これならば、すぐに試してみることができそうです。
プロジェクトが予定通りに進まないという人は一度読んでみるとおもしろいかと思います。
私が読んだのは「ザ・ゴール」と「クリティカルチェーン」だけですが、著者の理論はいつも小説として説明されます。この点は「読みやすい」と高く評価されているようですが、本当のところはどうなんでしょう。確かに読みやすいのですが、せめて最後に理論としてまとめの章があったほうが助かると思うのは私だけでしょうか。