この本「ニューギニア水平垂直航海記」の著者は峠恵子さんというシンガーソングライターです。寡聞にして私は知らなかったのですが、カーペンターズ を歌わせたら右に出る者はいないそうです。ということは、この本、よくあるタレントの日記本かなと思いつつ、巻末の解説を先に読んでみました。すみません。椎名誠さんによる解説です。「・・・解説を読んでから本文を読む人もいるので・・・」とちゃんと概要も書かれていました。なんか見透かされているようで悔しいのですが、どうやら私の第一印象とは違う内容のようです。「つまらなかったら途中で止めればいいや」ぐらいの気持ちで読み始めたのでした。

名前の通り常に恵まれていた著者は、「このままではいけない」と悩んでいました。そんな矢先に出会ったのが「ニューギニア探検隊」の隊員募集の広告。日本からヨットでニューギニアまで航海し、そこからマンベラモ川を遡上し、未踏のカールステンツピラミッド北壁を初登攀するというすごい計画です。本人いわく海も山もド素人という著者はこれに応募します。申し込む方も申し込む方だけど、受け入れる方も受け入れる方だとは思いませんか?

2001年4月15日に隊員を乗せたチャウ丸は油壺を出航します。しかし、すぐさま船酔いでコックピットはゲロまみれに。おしっこも垂れ流し状態(後に著者はペットボトルでkeikoスペシャルという尿瓶を開発します)。ウンコも海にお尻を突き出しての脱糞だそうです。包み隠しなしの淡々とした現実描写に、いつしか吸い込まれていくのでした。

読み進むたびに、どうしてこんなに苦労をするんだろうと不思議に思うことが、続々と起こります。そんな風に考えちゃいけないのかな。

独立組織のゲリラ活動が激しく、カールステンツ北壁の登頂はできませんでしたが、トリコーラ北壁の初登攀、幻の犬の捜索、旧日本軍兵士の慰霊と、多くの偉業を成し遂げます。と私が書いてしまうと、薄っぺらいものになってしまうのですが、これらを実現するための苦労、悩み、感動が本文中に余すところなく描かれています。

それはぜひ、本書を読んで味わってください。

ちなみに本文中に出てくる「ユースケ」さんはこの方のようです。また、「日本ニューギニア探検隊」のサイトの一部と思われるページがこちらに残っています。さらに峠恵子さんのCD はこちらからどうぞ。