
講談社「機長の一万日 - コックピットの恐さと快感!」(田口美貴夫著)を読みました。先日、同じ著者による「機長の三万フィート」を読みましたが、こちらよりも文章が堅苦しく感じられました。今回読んだ本は、何冊か本を書かれている著者の最初の1冊だからでしょうか。しかし、実際のフライトにまつわるエピソードは今回の「一万日」のほうがおもしろいです。
写真提供で協力があることからも、著者は職場である日本航空の許可を得てこれらの本を出版しているのでしょうが、もし無許可で出版していたら問題になるかもしれないような記述もあります。アメリカでは、ブログが元でフライトアテンダントが解雇されたりしていますが(この方です)、例えば、本書に掲載されている話で、天皇陛下のVIP補助機の操縦をしていた時に、もう用無しになったVIP用の機内食をこっそり食べた話などは無許可で掲載したら問題になりそうですよね。
全部おもしろいのですが、その中でも個人的になるほどと感じた話を3点ほど紹介します。
まず1点目は携帯電話についてです。航空機内では計器への影響を考えて携帯電話が使用禁止になっていることは周知の事実です。もちろん私も守っていますが、個人的にはかなり過剰防衛なのかなと感じていました。最善の予防策とでも言いましょうか。普通は影響などないけれど、あると怖いから禁止しているレベル、そんなものなのかと思っていました。でも、どうやらそうではないようです。飛行中にある計器がおかしくなり、フライトアテンダントに確認してもらったところ、携帯電話をしようしている乗客がいたそうです。その使用を中止させたところ、計器も元に戻ったそうで、実際に携帯電話は計器に影響を及ぼすことがあるようです。
2点目は航空機内の室温についてです。機内はどちらかというと涼しいくらいになっていて、必要な人にはブランケットが配られるようになっていますね。あれは、高度の高いところを飛んでいるから暖房能力がついてこないのだとばかり思っていましたが、実はその逆なのだそうです。空気は機内に取り入れる時に圧縮するので、熱くなります。このままでは暑すぎて使用できないので、いかに冷房でそれを下げるかが問題なのだそうです。なんか、意外でした。
3点目は着陸時のエンジン音についてです。着陸時にエンジンの出力音が大きくなったり小さくなったりしているときは難しい着陸だと思ってよいそうです。気流の影響を微妙なエンジンコントロールで乗り切ろうとしているんだそうです。そういえば10何年か前に羽田から釧路に飛んだ時がそうでした。ナスのような形をしたジェット機でしたが、着陸のために高度を下げる時の状況がまさにこれでした。おかげで着陸後はかなり気持ち悪くなっていました。
こんな具合におもしろい話が満載でした。私は単行本で読みましたが、文庫本もあります。機長の視点でフライトを見てみるのもおもしろいと思いますよ。
