集英社文庫「寄生虫博士の中国トイレ旅行記」(鈴木了司著)を読みました。元々、寄生虫の専門家であった著者は寄生虫との関連からトイレに興味をいだくようになりました。本書ではその著者が家族計画の一環で中国を訪問した時に訪れた数々のトイレが紹介されています。

中国のトイレというと「ニーハオトイレ」という言葉があるように、ドア無し壁無しのトイレが有名です。そんな話を知っていただけに、本の題名だけで興味をそそられてしまいました。ただ、著者が本書中でも言及されているように、中国のトイレは日々変わっているようなので、本書中のトイレが今もそのままであるかどうかはわかりません。

読み始めると、予想外に話があちこちと飛ぶので、ついて行くのが大変ですが、次第に引き込まれていきます。特に私は次のトイレに興味を持ちました。

まず、ブタトイレ。その名の通り、人間の便をブタが食べるというトイレです。聞いたことはありましたが、なかなかすごい発想だと思います。一見、合理的に見えるかもしれませんが、衛生的にはやはり問題があるようです。有鈎条虫という恐ろしい寄生虫が蔓延する可能性を秘めています。余談ですが、場所によっては犬が人糞を食べるそうです。これはちょっとショッキングでした。

メタンガストイレ、これもすばらしいです。用を足したものを蓄積させ、メタンガスを発生させ、それを料理や照明に利用するというものです。火力は弱いそうですが、これって不要物が燃料の元になってしまうのだからすごいエコロジーだなあと思います。

また、下水処理施設のしっかりしていないところでの水洗トイレは逆に衛生的ではないというお話も勉強になりました。素人考えでは水洗イコール衛生的と考えてしまいがちですが、きちんと処理されないまま汚物が川や海を汚染すると、それは危険なのです。言われてみればその通りなのですが、そう考えるとトイレも奥が深いなあと思います。

読み終わって何か物足りないなあと思ったのですが、考えてみると写真がほとんど無いんですね。私の場合、読解力が乏しいので文章でトイレを形容されても、なかなか正確にイメージできないのでした。これで写真がたくさん使われていたらもっと楽しめただろうなあと思います。