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硫黄島の星条旗

私が以前書いた「硫黄島の星条旗」の写真にもある、このジョー・ローゼンソールが撮影しピューリッツァー賞も受賞した写真の中で、硫黄島の摺鉢山に星条旗を掲げようとしている6人の若者にスポットを当てた本です。作者であるジェイムズ・ブラッドリーはこの6名のうちの一人、衛生下士官だったジョン・ブラッドリーの子供です。ところが、彼の父親は生前、硫黄島のことを語ろうとはしなかったそうです。父の死後、遺品の中から彼が海軍殊勲賞をもらっていたことを知り、ジェイムズ・ブラッドリーは彼らのことを調べ始めたのでした。

6名の生い立ちから海軍に加わるまで、そして全米で賞賛された写真の中に写りこんでしまったばかりに受けるその後の数奇な運命の数々が細かく描かれています。とはいえ、硫黄島の後の話があるのは3名だけです。残りの3名は、硫黄島で戦死しています。

本当は彼らより先に摺鉢山に星条旗を掲げた先人がいたという話は興味深いです。彼らはその後に代わりの星条旗を掲げにいっただけなのに、たまたまそれを撮影した偶然の写真が全米を駆け巡ってしまったため、一躍英雄となってしまいました。彼らにしてみれば何も特別なことはしていないのに、ある日を境に国民的英雄になったわけです。このギャップに苦しむ姿がよくわかります。

ジョン・ウェイン主演の「硫黄島の砂」という映画がありますが、これに彼ら3人がスポットで出演させられたという話も初耳でした。写真一枚で人生が大きく変わるということもあるんです。

硫黄島での戦闘シーンにも多くのページが割かれています。著者は日本に住んでいたこともあるということがですが、日本軍による戦闘をルールを無視した戦い方(戦争のルールって何?)と表現したり、その残虐な行為を描写する時は、やはりアメリカ人からの視点です。硫黄島の飛行場を奪取することで日本への空襲や原爆投下が容易になり、多くの民間人が殺されたことは自明です。ちなみに、硫黄島では多くのアメリカ兵が犠牲になりましたが、その後はその犠牲を上回るアメリカ兵の命が硫黄島の飛行場によって助けられたという統計があるそうです。

この本は27の出版社に断られ、やっと出版にこぎつけたそうですが、その後は全米でベストセラーとなりました。クリント・イーストウッドによって作成されたアメリカの視点からによる硫黄島の映画はこの本に基づくんだと思います。

本の冒頭にヨシクニ・タキという方の言葉が引用されています。

国と国のことは、母親たちが協議をしたほうがいい。戦う国々の母親たちは、この殺戮はもうやめよう、こんなことはもうやめよう、という点で同意するだろう

とあります。とても印象的です。名前から日本人ではないかと思いますが、恥ずかしながらどういう方なのか知らずにいます。