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博士の愛した数式

 この本は映画化されたのでご存知の方も多いと思いますが、私も「男たちの大和」を見に行った時の映画館の予告編でその映画の存在を知りました。

 「ぼくの記憶は80分しかもたない。」寺尾聡さん演じる博士からは宇野重吉さんの面影も感じられ、その演技のすばらしさが予告編から伝わってきました。私の世代の寺尾聡さんといえば、GSの「サベージ」ではなく西部警察の刑事であり、「ルビーの指環」です。そのイメージが変わったのが黒澤明監督の「」や山田洋次監督の「男はつらいよ」での演技を見た時でしょうか。

 まあ、ともかく映画を見たいと思っていたのですが、タイミングが合わずDVD待ちです。仕方が無いので、小説を読みました。

 物語は交通事故で事故以後の記憶が80分しか持たない数学者(博士)と、そこに派遣された家政婦(私)と、その子供(ルート)が織り成す暖かいお話です。物語には話の筋としては重要な意味を持つ博士の義姉の未亡人も登場してくるのですが、まあ細かい話は読んでのお楽しみとしておきましょう。

 不思議なことに、映画の予告編を見ていたので、本を読んでいても頭の中の博士の会話や仕草には寺尾聡さんが登場し、家政婦としては深津絵里さんが登場してきます。博士の演技で予告編だけではイメージできない部分は、現在放送中のダイワハウスのCMに出てくる教授の寺尾聡さんがその不足分を補ってくれるのでした。

 本を読み終わってから映画のキャストを見たら浅丘ルリ子さんの名前がありました。なるほど、これが義姉の未亡人かとすぐにわかりました。こちらもイメージとしてはぴったりです。ただ1点わからなかったのは吉岡秀隆さんでした。本にはいない登場人物がいるのかと思いきや、これは大人になったルートの役でした。小説ではエピローグ部分にだけ登場しますが、映画では回想がメインになるのかな。それは映画を見てのお楽しみとしましょう。

 物語のつながりに、数学の難しい公式やタイガース時代の江夏豊投手などが出てきます。数学は勉強になります。でも、公式そのものや江夏投手そのものの知識が無くても「そういうものなんだ」と思って読み進めれば十分楽しめます。

 人間の暖かさがとてもよく伝わってきました。博士の子供に対する接し方からは、自分も子供に対してこんな風に真剣に接し褒めてあげられたらと、少し反省です。

 著者の小川洋子さんは数学の情報収集のために、数学者の藤原正彦さんに取材をしたそうです。その藤原さんが巻末に解説を書いています。こちらもウィットに富んでいて無駄のないとてもおもしろい文章です。

 ぜひ、小説を楽しんでもらいたいと思いますが、やっぱり映画も見たくなりました。