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ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する

 シカゴ大学の教授スティーヴン・D・レヴィットと作家でジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナーによる本です。職場の方に貸してもらい読みました。

 アメリカではベストセラーになった本で、2005年に最もブログで論じられた本にもなったそうです。副題に「悪ガキ教授が世の裏側を探検する」とあるように、データに基づき普通であれば見過ごしてしまうような相関関係や因果関係を見出し、驚くような結論を導き出してくれます。

 例えば、犯罪率の低下があります。これによると、ニューヨークのジュリアーニ市長による努力は直接的な原因では無いとされます。彼の窓割れ理論は有名です。小さな犯罪を見過ごすと大きな犯罪につながるというものです。この本によると、この対策によって犯罪が減ったのではないというのです。犯罪が減ったのはアメリカで1973年に中絶が合法化されたからなのだそうです。あまり良い話ではありませんが、中絶できずに生まれてきた子供が犯罪に走る確率は高く、そのような犯罪予備軍が中絶によって減ったためにその世代の子供が犯罪適齢期(?)になった時に犯罪率低下の効果が出たという主張です。あまり良い話ではないというのは著者自身も言ってますが、データに基づいた結論のようです。

 また、銃を所持している家庭で子供を遊ばせるのはとても危険だと親は考えますが、実はプールのある家庭で遊んでいて溺れ死ぬ確率のほうが100倍高いんだそうです。これもデータです。

 とまあ、こんな感じでデータに基づいて興味深い話がたくさん紹介されています。日本に関係のあるところでは、相撲の八百長に関するデータ分析もあります。

 経済学とはいうものの、難しい数値は何も出てきません。どちらかというとトリビア的知識の本として読める内容です。でも、著者の一人スティーヴン・D・レヴィットは、ジョン・ベイツ・クラーク・メダル(2年に1度、40歳未満で最も優れたアメリカの経済学者に送られる賞だそうです)をもらうようにその世界では高く評価されている人です。

 主張を裏付けるデータの説明も最低限なので、一見結論に結びつけるのは強引なんじゃないかと思うところもたくさんあるのですが、それについては訳者が「「ヤバい経済学」のなにがどうヤバいのか − 訳者のあとがきに代えて」で補足しています。著者のサイトに行けば、十分な裏づけのデータが覗けるそうです。そうでしたか。それだけ聞けば十分です。これから読もうとしている方は、いざとなればいつでも検証できると思いながら読んでみると説得力が違うかと思います。本文中で細かく検証されるよりも読みやすいのは間違いないです。