「複合大噴火」という本を読みました。これまでもこの著者の本では「洞爺丸はなぜ沈んだか」とか「太平洋の生還者」などを読みましたが、どれも私好みです。最近の本は読んだことがありませんが。
著者自身があとがきで「われながら風変わりな本を書いた」と言っているよう、不思議な感じのする本です。事実に即して話が進められているのですが、物語を読んでいるような気分になります。
話は1780年頃の世界が舞台です。著者が昔読んで脳天を打たれたように感じた論文を、さらに独自に調査した結果がまとめられています。その論文は、天明の浅間山の噴火がフランス革命を誘発したという論旨でした。著者は、その浅間山の噴火の少し前にアイスランドのラキ山の噴火があったことを挙げ、浅間山の噴火とラキ山の噴火の二つがフランス革命、また日本国内では田沼意次の失脚につながったと展開しています。
天明の浅間山の噴火は有名です。それまで、浅間山は北側に溶岩を流れ出すことは無かったそうです。そんな油断のあった鎌原地区に秒速100メートルという火砕流が襲います。運よく高台の観音堂に逃げ延びれた人を除いて多くの人が亡くなりました。その後は川がせき止められることによる出水が繰り返され、吾妻川から利根川には多くの死体が流されていったそうです。このあたりの描写がとてもリアルでした。私も小学生の頃、この観音堂に行ったことがあります。発掘調査では観音堂の階段の途中で火砕流に飲み込まれた母親をおぶさった親子の白骨死体が出てきました。その写真を見ましたが、今でも覚えています。
上の浅間山の噴火は一例ですが、他にもラキ山の噴火や、フランス革命の様子、または田沼意次の後から改革を行う松平定信の出世の具合など、どれもその場にいるような気分になる文章でした。
著者自身は、エッセイとして読んでほしいといってますが、物語としてドキドキしながら読み進めることのできる本でした。