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愛国者は信用できるか

 題名に惹かれて読んでみました。鈴木邦男氏といえば、一水会を作った方で新右翼の代名詞のような人です。とはいえ、いわゆる左翼の人とも交流があって幅広く活動されていると思います。

 右翼を自認する人が書いた本なので、それなりに一方向からの主張になるのかと思いきや、まったく違いました。ニュートラルに書かれているだけでなく、右翼らしくない主張もたくさんあります。例えば、日の丸・君が代の強制を良く思っていなかったり、男系の天皇にこだわっていない点など・・・。とても客観的に論じられていると思います。

 個人的には鈴木邦男氏が今に至る生い立ちを語っている部分が一番興味深かったのですが、それはほんの一部です。三島由紀夫氏とともに自衛隊の市ヶ谷駐屯地で自決された楯の会の森田必勝氏との関連など、いろいろなところで人と人がつながるのは読んでいて楽しいです。

 三島由紀夫氏が愛国心と言う言葉を快く思っていなかった点には賛同したいと思います。確かになんとなく押し付けがましい感じがする言葉です。理想としては自然に醸成される気持ちであるべきだと思います。そして、本来、自分が帰属する組織に対しては誰でも持っている気持ちだとも思います。でも、日本においては愛国心という言葉に一種のアレルギーがあるのも事実です。私も愛国心と言う言葉を使って自分の気持ちを表現されるのには少し抵抗を感じます。藤原正彦氏は愛国心に代わり祖国愛と言う言葉を使おうとしているそうです。でも、鈴木氏は、日本では愛国心と言う言葉には暗い過去があり、一種の抑止力も伴っているからこそ、このままで良いのではないかとさえ言います。客観的な判断です。

 読み終わってみて「愛国者は信用できるか」という題名と本旨に少しずれを感じましたが、愛国心全般についての考えは深まったと思います。そして、最後の最後に鈴木氏が残している文章に非常に共感を覚えました。ここに引用します。全然、右翼っぽくないです。

 さらに言うならば、愛国心は国民一人一人が、心の中に持っていればいい。口に出して言ったら嘘になる。また他人を批判する時の道具になるし、凶器になりやすい。だから、胸の中に秘めておくか、どうしても言う必要がある時は、小声でそっと言ったらいい。