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自爆テロリストの正体

 なかなか人目を引く題名の本です。9.11の事件を語るまでも無く、イスラム原理主義者によるテロはよく発生します。なんとなく、抑圧された敬虔なイスラム教徒がどうしようもなくなってテロに走るようなイメージが先行していますが、これが大きな誤りであることを取材に基づいて実証しようとするのがこの本です。

 朝日新聞社でパリの特派員をされていた著者だけあって、取材はヨーロッパの各地にじかに足を運んで行われています。これにより、本書で述べられていることに説得力が感じられるようになっています。

 導き出された本書の結論を一言で言ってしまえば「劣等感がテロリストを作る」というものです。テロに走る人は、ある時まではエリートコースを歩んできた人や、どちらかというと恵まれた生活をしてきた人たちです。敬虔なイスラム教徒であったかというとそうでもなく、ある内面の変化が起こるまでは世俗的な生活を送ってきた人たちです。ある挫折感を味わい、それが契機となってテロリストへの道を歩み始めることが多いようです。何となくわかる気もします。世の中を見返してやろうという気持ちは大きな力を持つように思います。

 本書の中では、フランスの首相府直属機関「対セクト闘争省庁間委員会」の専門官であるアンヌ・フルニアという方の言葉が引用されています。

9.11テロをイスラム教と結びつけるのは、オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件を『仏教徒のテロ』と呼ぶことと同じほどばかげているのではないでしょうか。自爆テロの実行犯とイスラム教との間には、実は何の関係もないかも知れません。

これを読んで、何となく、目からうろこが落ちた気がしました。