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旅と病の三千年史―旅行医学から見た世界地図

 この本とは大宮シティクリニックにて出合いました。なぜか、待合室にこの本が山積みされていて、ご自由に持って行ってください状態になっていたので、これ幸いに頂戴してきた本です。

 ただ、しばらく活字を読む気になれず、また題名からも興味を持てなかったのでそのままにしてありました(すみません)。

 最近、読んだのですが、この本には今まで知らなかった世界が広がっていました。「旅行医学」という言葉がキーワードです。

 「旅行医学」、日本ではあまり馴染みのない言葉ですが、欧米では一般的なものだそうです。つまり、旅行者が旅行に出発する前に自国で受ける検診や予防接種と、旅行先で病気になった時に利用することのできる医療でしょうか。

 話は「旅行医学」の歴史から始まります。新大陸を求めての大航海の時代には、その土地にしかない風土病を自国に持ち込むことがあるため、必然的にそれを防ごうとする考えが起こります。また、地球規模で人が移動するようになると、スペイン風邪に見られるような大規模な感染症も問題になります。

 それでも、何よりこの「旅行医学」を発展させたのは軍隊のようです。進軍先で疫病にやられてしまえば戦うことができなくなりますから。その点、日本でも戦前は熱帯医学など、専門に研究が行われていたそうです。

 ところが、戦後、戦争に関連する医学とされ、あまり表舞台に出ることができずに封印され続けてきた事実があるようです。非常に説得力のある説明です。

 ところが、これだけ多くの日本人が海外旅行にでかけるようになると、やはり何か対応が必要になります。現在は、海外に駐在する日本人に対して会社が渡航前と帰国後の検診を受診させることが法律で決められているそうです。

 試しに「旅行医学」でネット検索してみたところ、たくさんのページがヒットしました。昨今ではお金を持っている高齢者の海外旅行がブームです。この「旅行医学」がますます発展するのは必至かと思えました。

 ただ、保険診療にはならないようで、自費診療である点が少しネックといえばネックでしょうか。

 「旅行医学」について何も知らない人が一通り「旅行医学」について知ることのできる本でした。史実に照らして語られる歴史にも興味深い記述がたくさんありました。