ハンセン病を生きて―きみたちに伝えたいこと (岩波ジュニア新書 574)
岩波ジュニア新書です。ということで若い私にはぴったりというのはさておき、ハンセン病を発症され療養所生活を送られた著者からの若者へのメッセージです。若者じゃない人が読んでも勉強になる本です。
著者は昭和32年、14歳の時にハンセン病を発症、沖縄愛楽園へ入ります。著者を連れておきたお父さんには療養所の職員から偽名の書かれた紙を渡されたそうです。療養所では本名を隠して生活するのです。その後、愛楽園では高校進学ができないため、脱走、パスポートを手に本土に渡ります。そして、長島愛生園へ。バスの車掌には切符を受け取ってもらえないばかりか、落ちた切符を足で海に蹴落とされてしまいます。中央労働学院での良き友人との出会い、そして就職。就職先でも理解ない人たちの態度に心を痛めつつ、理解しようとしてくれているのだと同僚を信じます。結婚から父親へ。そして離婚、10年後の息子との再会・・・どれを取ってもハンセン病とともに語られる人生です。
科学的にハンセン病が解明された今でも、昔からの偏見が人間を人間とは思えない行動に駆り立てるようです。アイスターホテル宿泊拒否事件の時、療養所に寄せられた匿名の手紙には同じ人間とは思えない悪辣な言葉が綴られていました。一部が本書でも紹介されています。
一方で偏った誤った見方を植えつけられていない純粋な子供たちのすばらしさも著者は語っています。ハンセン病を通して、子供たちとの交流を持たれているのです。子供から教えられるべき大人たちが日本にはまだまだたくさんいるんじゃないかと思いました。
本の巻末には国立ハンセン病資料館の案内もありました。ちなみに、著者は現在、長野県上田市で信州沖縄塾を主宰されているようです。