DNA科学者ヘレナ・グリーンウッドは1984年4月7日、夫の留守中に家に忍び込んできた男に性的な強要を受けます。ほどなくして一人の男が逮捕されますが、その裁判中に、彼女は殺されてしまいます。
証拠不足のため、この殺人事件の犯人は逮捕されずに15年の月日が経ちました。その間、世の中ではDNAに基づいた人物特定の操作が確立され、そしてとうとう、ヘレナ・グリーンウッドを殺した犯人も逮捕されます。
DNAとは何かという技術的な話や、一連の事件を取り巻く人たちの記述にも多くのページが割かれているため、事実だけをさっと読みたい人にはちょっとつらいかもしれません。ノンフィクションでありながら、どちらかというとフィクションを読むつもりで読み始めたほうが良いかもしれません。日本語訳はとても読みやすいです。
ただ、読後はフィクションのように勧善懲悪のスカッとした気分にはなれません。著者は裁判後、犯人やその家族とのインタビューをしています。実はこの部分がとても読み応えがあるのですが、このインタビューを通して本当に彼が犯人だったのだろうかという気持ちを抱いたのではないかと思います。
結局のところDNAだけが唯一の証拠だったのですから。とはいえ、良くは仕組みを知りませんが、この証拠の威力は絶大なのです。