前々から読んでみたいと思ってはいたものの、なかなか実現できずにいた本「マッカーサー回想記」からの抜粋本マッカーサー大戦回顧録 です。昨年末、通勤読書で読んでみました。

日本軍がどのように戦線を拡大していったかの知識がある程度ないと読み進めるのはつらいかもしれません。私は昔(15年くらい前?)に読んだ山岡荘八著「小説 太平洋戦争 」のわずかな記憶にだいぶ助けられました。そんな私でも特に上巻は読みづらく、スイスイ読み進められるのは下巻からでした。一貫して「○○に対して××した。これに大して△△から□□な賛辞(批判)をもらった」という記述が多かったからかもしれません。

下巻は日本が敗戦への道を転がり始めたレイテ戦から。マッカーサーが少ないリソースでいかに効率的に日本軍を駆逐してきたか、つまり、日本軍の補給線を断ち切るためにどのようにカエル飛びで日本軍を挟み撃ちする戦略を採ったかが語られています。レイテ海戦での今もって謎の栗田艦隊の転回についても、「全く予期しない救い」と吐露しています。

しかし何といっても読み応えのある箇所は、昭和天皇とマッカーサーとの最初の会見のシーンでしょう。マッカーサー自身、昭和天皇は命乞いをしにきたのではないかと考えていたようですが、その席上で昭和天皇から出された言葉には深い感銘を受け、「日本の最上の紳士」と褒め称えています。

憲法改正についてもおもしろい記述が並んでいます。現憲法発効17年後に書かれた回想で、まだ一度も憲法改正が行われたいないことに驚いています。現在までも一度も改正されていないことをマッカーサーが知ったらびっくりするでしょうね。また、9条の戦争放棄の条項はマッカーサー自身の考えではなく、幣原首相の提案であったとしています。とはいえ、マッカーサーも「戦争を国際間の紛争解決には時代遅れの手段として廃止」したいとしているのは興味深いところです。9条の戦争放棄の考えについては、防衛力を否定するものではないとも付け加えています。

訳者によると、この回想記にはいろいろな間違いもあるそうです。それがマッカーサーの誤解によるものなのか、それとも意図的にまちがったものなのかはわからないようです。でも、いずれにしても戦後の日本を一定期間とはいえ支配していた張本人による記録ですから、読んでおいて損はないと思います。


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