信州 長福時

こちらで触れた生島足島神社のすぐ隣に長福寺というお寺があります。類焼により本堂が焼け、昭和の時代に立て直されたため一見新しいお寺にも見えますが、平安時代の建立と言いますので歴史あるお寺です。

このお寺には奈良法隆寺の夢殿を模して昭和初期に作られた信州夢殿があります。元々この信州夢殿は重要文化財でもある白鳳時代に作られた救世観音菩薩立像を安置するために作られた建物ですが、その観音様は今はいません。平成7年に盗難に遭ってしまったのです。

その後犯人は新潟で捕まりましたが観音様は出てきていません。おそらくそういうものを専門に盗むプロなのでしょう。闇のルートで取引されてしまえば、今誰がどのような形で保持しているのかもわかりません。

窃盗の犯人を捕まえるところまでは警察の仕事ですが、盗まれたものを取り返すことは警察の仕事ではないわけです。前住職は犯人の捕まった新潟まで出かけていってもいますが、手がかりは得られなかったようです。お金や車の盗難と違って唯一無比のものの盗難ですからあきらめられるものではありません。

盗むやつも盗むやつですが、買うやつも買うやつですね。

実はこの観音様、昭和の初期にも一度盗難に遭い、無事発見されたという過去があります。今回も、無事、長福寺に戻ってくることを願ってやみません。


仏像がよくわかる本