@nifty(昔のNIFTY-Serve)から2006年3月31日をもってパソコン通信サービスの終了が発表されました。
私もつい何年か前まではNIFTY-Serveのパソコン通信用のIDを残していました。新規では入会できない従量制という課金形態です。インターネットからもtelnetで接続できたので(セキュリティ的にはかなり危険ですが)、時々つないだりもしていたのですが、用途がなくなってしまいました。
それでも、仲間内でpatioと呼ばれるフォーラムの小さいものをNIFTY-Serve内に作って意見交換の場としていたころはまだアクセスしていました。でも、インターネットで同様のサービスが使えるようになり乗り換えたのが決定打となりました。ほとんどアクセスしなくなってしまい、とうとうIDも削除してしまいました。
まだサービス終了まで1年ある状態で「思い出」と語るのも失礼ですが、少し昔話をしてみたいと思います。
私がパソコン通信を始めたのは1980年代の後半だったと思います。当時使用していたワープロ「文豪mini 7H」にモデムを接続して電話回線を利用すればパソコン通信が使用できるということで、新所沢のLAOXでAIWAの1200bpsのモデムを買ってきたのでした。
その頃の商用パソコン通信といえばPC-VAN(現BIGLOBE?)かNIFTY-Serveでした。PC-VANはNECが運営し、NIFTY-Serveは富士通と日商岩井(現双日ホールディングス?)が運営していました。NIFTY-Serveは米国CompuServeをお手本にしていて、接続料金を払えばCompuServeに接続することも可能でした。この点に惹かれ、NIFTY-Serveを選択したのでした(その後、PC-VANにも加入しました)。
パソコン通信を始めるとパソコンが欲しくなります。しばらくして80286という中途半端なCPUを搭載したPC-9801RXという機種を購入しました。OSはMS-DOSです。この上でNifTermと呼ばれるオートパイロットソフトを使用してパソコン通信をしていました。オートパイロットソフトはパソコン通信には必須のソフトで、事前に設定しておいたメール受信やフォーラムの記事取得を自動的に行うソフトです。これを使って電話の接続時間を最短にして、取得した情報は電話を切った後でゆっくり読むのです。
その後、TOSHIBAの初代ダイナブックを入手し、ポケットダックと呼ばれる音響カプラを使って出先からもパソコン通信にアクセスできるようになりました。ただ、受話器にセットする音響カプラは神経質でした。受話器に少しでも触れると文字化けが発生してしまうため、かなり使い勝手の悪い通信手段ではありました。
パソコン通信には商用のほかに草の根ネットと呼ばれる個人や小さい組織が運営するホストがありました。私も何ヶ所かお世話になっていましたが、埼玉の毛呂山の田中オートサービスさんが運営されていたTAS-NETにはよくお邪魔させてもらっていました。
パソコン通信はインターネットほど匿名性は保持できないので、みな自分の意見には責任が感じられました。もちろん、顔の見えない世界なので議論が単なる揚げ足取りのバトルになってしまうことはありましたが、相手がどこのだれなのかまったくわからないという気持ち悪さはなかったように思います。
話がパソコン通信一般になってきてしまったので、ここでNIFTY-Serveに戻しましょう。NIFTY-Serveといえば、定期的に中村さんという方からメールが届きました。NIFTY-Serveを運営されている方であるのは間違いないのですが、メールには肩書きが何も書かれていなかったので、当時はどういう人なのかはわかりませんでした。暖かい文面のメールで、あのメールを受け取るたびにNIFTY-Serveへの忠誠心を高めていったのは確かです。
今回、これを書くにあたりNIFTY-Serveの中村さんを検索してみたところ、こんな記事が出てきました。なんと中村さんはNIFTY-Serveで役員をされていた方でした。私も最初に一度だけですが、返事を書いたことがありました。これに対して中村さんからも返事が来たような記憶があります。今のように広告や迷惑メールが飛び交う中では考えられない世界です。
1994年か1995年、ダイクマ座間店でIBMのAptivaというパソコンを買った頃から状況が変わり始めました。マイクロソフトのWindows 3.1を搭載したパソコンでしたが、TrumpetというTCP/IPスタックをインストールすることでPPP接続が可能となり、インターネット接続ができるようになったのです。ISP(インターネットサービスプロバイダ)としてはIIJ、リムネット、bekkoameくらいしか選択肢がありませんでしたが、一番安いのはbekkoameで今では一般的となっている定額制でした。このbekkoameでインターネットを始めたわけですが、従量制のNIFTY-Serveに対して定額制のインターネットですから、軸足は少しずつインターネットに移っていったのでした。
サービス終了は時代の流れといってしまえばそれまでですが、パソコン通信の果たした役割は大きかったと思います。
@niftyのパソコン通信サービス終了の告知ページにはQ&Aがあります。この質問は
「ワープロ・パソコン通信」とは何ですか?
から始まります。これがすべてを物語っていると思います。もう@niftyの会員の多くはパソコン通信などは知らないのかもしれません。
また、
ニフティの他に、「ワープロ・パソコン通信」サービスを提供中のプロバイダはありますか?
という問いに「ございません」と答えています。まさに日本のパソコン通信はNIFTY-Serveに始まってNIFTY-Serveに終わったという感じでしょうか・・・。何とも感慨深いものがあります。
とはいえ、今からパソコン通信を使いたいかと聞かれれば答えは「否」ですから、我ながら自分勝手だとも思います。あと1年、@niftyのパソコン通信サービスには有終の美を飾ってもらいたいです。