講談社プラスアルファ文庫の向井万起男著「君について行こう (上) 女房は宇宙をめざす」と「君について行こう (下) 女房と宇宙飛行士たち」を読みました。
向井千秋さんが最初に宇宙へ行ったのが1994年ですから、もう既に10年以上昔の話になっちゃうわけですね。でも、昨日のことのように覚えています、彼女のパートナー向井万起男さんの独特の風貌だけは。その後、彼が「君について行こう 女房は宇宙をめざした」という本を出された時も「あの方が書かれた本だから絶対読もう」と思いつつ、結局10年近く経ってしまいました。
一言で言って「実に愉快」です。
「マキオちゃん」こと著者は病理医でもあるわけですが(というか、それが本職)、そのせいか人物や物事に対する観察力がすごく、それを読みやすい文章にする能力もすごいと思います。
奥様である「チアキちゃん」とは慶応義塾大学病院勤務時代に接近するわけですが(ちなみに、向井千秋さんは石原裕次郎の担当医でもありました)、彼女の幼少期にまでさかのぼって彼女の影響を与えた人たちを挙げ、彼女の性格を「みなし児一人旅」と命名するさまはまさに見事としか言いようがありません。読んでいて感動しました。
もちろん、普段の生活に関する記述からも「チアキちゃん」の一端を垣間見ることができます。服に無頓着であることや、結婚では式も写真も何もしないことを主張したことなど、普通の女性だったら暴露されて怒りそうな気もしますが、きっと彼女は怒らないのでしょう。本書を読んでそんな気がしました。
NASAの向井千秋さんの紹介ページによると、彼女の趣味に「アメリカ文学」が挙げられています。すごいなあと思いますが、この辺の逸話は本書を読んでみると真相がわかります。
下巻は打ち上げ45日前からの記録が時系列に書かれています。宇宙飛行士の夫でなければ見られない生の宇宙飛行士たちが、そこには描かれています。実は個人的にフロリダのケネディスペースセンターには行ったことがあるので(旅行記はこちら)、彼の文章の片隅に旅行時のイメージが重なる箇所があって、人一倍楽しめてしまいました。
こんなおもしろい本なのですが、彼女が無事、宇宙で飛び立ったところで終わります。宇宙での話や、帰ってきてからの話はないの? と誰もが思うはずです。と思ったらやっぱり続きがありました。「続・君について行こう 女房が宇宙を飛んだ」今度は機会を見てこれを読みたいと思います。