先日、珍しいものをいただきました。ふぐのぬか漬けです。ご存知の通り、ふぐには毒がありますから、毒の無い部分のぬか漬けかと思いきや、これがまったくの反対なのです。
なんと毒がたっぷりつまった卵巣部分のぬか漬けでした。石川県の「あら与」という会社が作る「ふぐの子ぬか漬」という商品です。
先人たちの食に対する挑戦には本当に驚かされます。細かい話はあら与のサイトにある説明を読むのが一番ですが、簡単にまとめるとこんな感じに作るそうです。
- ふぐから真子(まこ)と呼ばれる卵巣を取り出します。これはそのまま食べたら5〜6人の致死量の毒があるそうです。
- これを30%の塩水で1年間、塩漬けします。
- その後、糠(ぬか)に2年間漬け込みます。この時、イワシを塩漬けして抽出したエキスも使うそうです。
これを実行すると、不思議と毒が消えてしまうのだそうです。毒が消えているかどうかは出荷時にきちんと検査するそうなので安心です。なお、Q&Aコーナーの「ふぐの毒は大丈夫なの?」には次のように書かれていました。
食品衛生法の規定では、ふぐ卵巣加工品の毒力指数は10MU/g(マウス単位)以下は人体無害となっています。当製品はこれ以下の5MU/g未満です。
う〜む、心配している人を安心させるために書かれた文章ではあるのでしょうが、これを見ると、少しは毒が残っているのかのようにも見えてしまいます。微妙です。
このふぐの卵巣加工は石川県だけでしか認められていないとのことです。つまり、日本広といえども、ふぐの卵巣のぬか漬けを食べたかったら石川県にある数社から購入するしかないということです。また、誰がこんな加工方法を考え出したのかも、どうして毒が消えるのかもわかっていないそうで、昔から受け継いできた伝統の製法にこだわるしかこれを作る方法は確立されていないのだそうです。食のロマンを感じます。
毒は消えているとわかっていても、いざ食べるとなると少しだけ心配だったりします。もしかして、この部分だけ毒が残ってないか・・・とか。でも、口の中に入れると「チンミ〜」って感じでした。。ぬか漬けなので塩っけは強いですが、猛毒部分を食べてるぞっていう気負いが、否が応でも精神的な満足感をかもしだしてくれます。
酒の肴にもってこいですが、酒飲みでなくてもあったかいご飯と一緒に食べたくなる味です。
こんな珍味、さぞ高いのかと思いきや、それほど高くもありません。これにはまたびっくりしました。
ふぐの子糠漬
と、考えると、自分で捌いてでもどうしてもフグの卵巣を食べたがる人がいるらしいですが、あれは一種のジャンキーなのかと…
恐らくそういった向こう見ずな新石器時代(私的ヨミ)からの食の冒険者達が、スギヒラタケの食し方や、フグの毒抜き法を、いくたりもの方の死をもって発見してくれたのでは。
隣人の突然の死は、使命感すら高めたことでしょう。