普段は何も考えずに電気を使っています。東京電力のでんこちゃんがTV CMで「電気を大切にね」なんて言うのを聞くと(最近、見ないですね)、どうして東京電力は電気がたくさん売れれば儲かるのに儲からないようなメッセージを送るのだろうと考えてしまうのですが、考えるといってもそんなことくらいです。
ところが、電気は奥が深く最終的には国家の安全保障にも直結しているということがこの本では述べられています。「週間ポスト」の連載記事をまとめた本のようです。週刊誌というと軽いイメージで見てしまうのですが、中身はとても真面目です。
電気は作り貯めすることができないため(蓄電池がありますが高価です)、需要に対する供給のバランスを取ることがとても難しいです。この辺の微妙なさじ加減が職人技によっているという説明はとても興味深いです。東京電力による原発の亀裂隠しによる点検のために原発が停止していた期間は、それまで稼動が停止されていた火力発電所を再稼動させたりして急場をしのいだようですが、安定した電力供給の裏にはそれ相応の人間の努力があるということがよくわかります。
一般的に次世代の発電に関する期待をアンケート調査すると必ず太陽光発電や風力発電が出てきます。しかし、これは発電に必要な条件が一定でないため主力の発電方式には成りえず、また単位あたりの発電コストも高くなるそうです。理想と現実のギャップです。
となると、現実的な面から言って主力は原発しかありえないのですが、一般的には理解不足から恐怖心を煽るような報道ばかりがなされていることが問題だとしています。例えば、高速増殖炉「もんじゅ」。ナトリウム漏れ事故から10年経って今年から工事が始まっているようですが、ナトリウム漏れ自体は放射能漏れなどとはまったく異質の事故であることが正しく伝わっていないようです。また、東電の原発でのシュラウド亀裂に関しても必要以上に過大に報道されているようです。
私は、日本国民が電気の安定供給をあきらめて高コストを受け入れるというのであれば、脱原発も選択肢の一つだと思いますが、海外に依存しなければならない石油やLNGを主力とすることはこの本にもある通り安全保障上問題があることは明白でもあると思います。
このほか、本文中で紹介されていた水素についても興味があります。水素による燃料電池はクリーンなエネルギーです。水しか出しません。また、水素は科学的に生成することもできます。日本では原子力を使用した高温ガス炉と呼ばれる装置で水から水素を生成することに成功しているそうで、この分野でも世界的にトップを走っているそうです。こちらも原子力なので実現まではいろいろありそうですが、水素が安価に提供できて車が燃料電池で走るようになればだいぶ世の中変わりそうな気がします。