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定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?

 「定刻発車」という本を読みました。

 日本の鉄道はどうして時間通りに発車して時間通りに到着するのでしょう。普段当然と思っている鉄道の定刻発車は諸外国ではそうではありません。ヨーロッパあたりでは15分までの遅れは定刻と記録されるそうです。日本特有の定刻についてその歴史や舞台裏に迫ったのがこの本です。

2001年に書かれた本ですので本文中ではSUICAもまだ未来のものとされています(「文庫版あとがき」では触れられていますが)。2005年の春に文庫化されましたが、その直前にJR西日本福知山線の脱線事故がありました。定刻発車を知る本として多くの人に読まれたのだと思います。

失礼ながら、定刻発車についてだけでよくもここまで多くのことを調査されたな、というのが最初の正直な感想です。参勤交代の時代に既にダイヤグラムがあったというのは驚きです。

まあ、本の要旨は私自身がまとまりの無いことを書くよりは著者自身のサイトを見ていただくのが一番良いでしょう。

おもしろいのは、定刻発車には乗客自身も協力しているというくだりでしょうか。鉄道に乗るにはみんなで協力して公共マナーを守らないといけなません。しかし、その結果、鉄道はプライベートな移動空間ではなくなり、公共の場になりすぎてしまったというわけです。そこから導かされる鉄道の未来像は興味深いです。鉄道はより自律調整的に運行されるようになって、乗客に対してはよりプライベートな空間を与えるべきだという考えです。例えば、女性が車内で化粧をするのは現代では良くないことと考えられているのが一般的ですが、未来像に照らし合わせて肯定的な流れと捉えています。今ほどプライベートな空間を奪われていなかった時代の鉄道では、車内で授乳する母親もいたではないかと言っています。

目からうろこが落ちたような心境です。

これを実現するには東京のような一極集中にもメスを入れないといけないと思いますが、電車の中でコーヒーでも飲みながらゆったりと通勤できるような時代が来るのであれば、大歓迎です。