麻原彰晃こと松本智津夫被告の死刑は確定したものの、このような大きなニュースでもなければマスコミにオウムが登場する数は極端に減りました。とはいえ、名前は変わったり、分裂騒ぎを起こしたりはしているものの、オウム真理教の流れは現在もそのまま残っています。
この事件は風化させてはならないものです。オウムといえば必ず名前の出てくる江川紹子さんの本、文庫本2冊を読みました。
もともと「週刊読売」や「週刊文春」への記事を集めた単行本で、2000年ころまでのオウム関連裁判の記録です。
事件の真相を知りたいという著者の欲求が行間からにじみ出てきますが、残念ながらそう簡単にすべてがわかるわけではありません。この手の事件は判決が出て終わりというわけではありません。どうしてこうなってしまったのかという点を裁判で明らかにしておくべきだと思います。ところが、被告人の心の問題、制度的な問題に阻まれ、正直それが達成できたとは言い難い状況です。その点も著者の文章から悔しさがよく伝わってきます。
最後の章以降には、最近書かれた文章も含まれています。文庫本あとがきでは9.11の事件を始めとするイスラム原理主義組織によるテロとオウム真理教による事件の対比を行っている箇所があります。相対的に見て、反米を機軸とするテロに崇高なものを感じているように読み取れてしまったのが少し気になりました(著者の本心ではないと思いますが)。私の中ではいかなる理由があろうとも無差別殺人は無差別殺人です。