「戦争の話を聞かせてくれませんか」という文庫本を読みました。もともと、平成6年に出版された「戦火の記憶 いま老人たちが重い口を開く」という本を改題したものです。
著者の佐賀氏は茨城県土浦市で診療所を営むお医者さんです。元々、近隣の人たちから話を聞き集めて文章にするということをされていたようですが、この本に出てくる人たちも皆、著者の患者さんであったり、その知り合いの方であったりです。彼らが語る戦争体験の言葉をとても忠実に文章にされています。
戦争体験者が書いた本というのはたくさんあって、読んでとても勉強になります。でも、自分で文章にして体験を語ることができる人は、ほんの一握りでしかありません。実際には本にはならなくても、色々な過去をお持ちのご老人が近くにいるんです。著者のまわりでこの本の話を語ってくれた方々も、普段はそれほど戦争の話などはしないのかもしれません。でも、書かれていることは語ってくれて文章に残されて良かったと言う話ばかりです。
彼らが語ってくれた話について、著者は特に意見はしていません。聞いたままのありのままを文章にしてくださってます。無言館の時と同様、話を読んでいかに感じるかは読み手次第と言うスタンスなのだと思います。おかげで、こちらは変に構えず読み進めることができました。
戦争体験者の話を読んで思うのですが、皆が戦争でお国のために頑張るということを特に抵抗無く自然と受け入れている点が印象深いです。軍部が暴走して、国民は嫌々戦争に参加したという話を時々聞きますが、これは非常に偏った見方だなあと改めて感じています。
この点を見ても、戦争がいかに人間の心理に極限まで影響してくるのかというのがわかりました。このような恐怖・死と向き合ったことのない僕は、その状況下に置かれたらどうなってしまうのか想像するのは辛いです。