なんだかんだいっても北朝鮮の実情がどうなっているのかはとても気になるところです。これまでも時々読んでましたが、今回はこの本です。
中国朝鮮族を研究されている西南学院大学国際文化学部教授である著者が、中国で知り合った脱北者から聞いた話を本にしたものです。その名の通り自ら告白する文体であるため、とても伝聞を読んでいるとは感じません。
これを読んで、そういえば以前にも朝鮮人民軍に属していて脱北した人の本を読んだことを思い出しました。やはり同じような記述だったと記憶しています。北朝鮮の社会が腐敗していることがよくわかりました。
賄賂がものを言う社会であることは、北朝鮮の一般社会だけでなく軍隊でも同じであるようです。また、親やそのまた親の出身成分が子供の立身出世に大きく影響を与える世界でもあるようです。まあ、ここまでは何となく納得できるのですが、軍隊内では盗みが日常茶飯事であるというのはいただけません。軍隊内で問題の「解決」と言えば盗みなのだそうです。軍隊内部での盗みはもちろん、一般市民からの略奪も常習化しているようです。これが事実なら、もはや朝鮮人民軍は人民の敵になりつつあるように思います。
実は、この本を読んでいて一番興味深かったのは、この話を語った兵士のことでした。軍隊内では異例のスピードで出世した人だったのです。若いのに中隊長にまで上りつめた人です。結局、その後、母方の祖父が地主だった理由でそれ以上の出世ができなくなりました。彼にとっては大きな挫折です。そして、最終的には脱北までします。
ここで、この前読んだ「自爆テロリストの正体」を思い出しました。テロリストになる人もある程度恵まれた環境にいることが多いのだけれど、ちょっとした転機で変貌を遂げるというくだりです。この本の兵士もそうだったのかもしれません。自分ではどうすることもできない挫折感が彼のその後の方向を決めた可能性はあるかと思います。
そうやって考えると、北朝鮮が現在行っている政策はそれ自身が国内体制の崩壊に作用しているようにも見えてきます。今後、北朝鮮がどういう方向に進むのかとても気になるところです。本当は自分の目で見てみたいとも思います。