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アナタの財布も危ない!ニセ札の恐怖 (扶桑社新書 15)

 題名そのもの、専門家が語るニセ札のお話です。

 著者の松村さん、初めて聞く名前の方も多いと思います。私もそうでした。松村エンジニアリング代表取締役です。ソウルオリンピックに向けてニセ札鑑定機の開発に着手しました。まだ、ピンと来ないですね。でも、ニセ100ドル札「スーパーK」の発見者といえば、世界的に有名な方だとご理解いただけることでしょう。

 なぜ、スーパーKと呼ばれるようになったのか・・・本当は違ったのでした。とある生放送のテレビ番組に出演している時に、突然、この世界的に有名なニセ札に名前をつけて欲しいという話があって、本当は北朝鮮(North Korea)を意味する「スーパーNK」と名づけようとしたそうです。ところが、緊張のあまり「スーパーK」と言ってしまい、それが一人歩きしたのだとか。なるほど、当事者でなければわからないお話です。

 それにしても、「スーパーK」を手に入れるまでの苦労話はおもしろいです。著者はこのニセ札を求めて東南アジアを放浪したのち、タイの歓楽街に身を置きました。かなり危険な目に合いながらやっとのことで4枚のニセ札を手に入れたようです。しかし、その後、持ち帰ってもなかなか本物との違いがわからず、最後は紙幣を食べ比べたりもしたようです。すごすぎますね。

 スーパーKの後にもスーパーM、スーパーX、スーパーZ、スーパーZ1、スーパーZ1+とどんどん精巧なニセ札が出てきています。もうここまで来ると、本当のお札と同じものを印刷する技術があるのだとか。ところがそうしてしまうと、ニセ札を作っている当事者がニセ札と本物の見分けがつかなくなってしまうので、何かしらの暗号(目印)をわざわざ入れているのだそうです。新しいニセ札がでるたびに、そういう暗号を探し出す作業を行われるわけですが、そういうことをしていると、ニセ札作成者からのメッセージを感じるそうです。これは、一般人にはわからない感覚でしょう。

 危険な目に会いながらも、ここまでニセ札の鑑定に打ち込んでこれたのは、技術者としてのプライドによるところも大きいと言います。なるほど。ある意味、そういうプライドを持てるのはうらやましいなあと思ったりもします。