少し前に図書館で偶然見つけて夢中になってしまった本がこの「無人島に生きる十六人」です。子供の頃、「ロビンソン・クルーソー」や「十五少年漂流記」を読んだ人は多いかと思いますが、この年になって、漂流ものにこれほど熱くなるとは思いませんでした。
明治時代に南方調査に出かけた龍睡丸が座礁し、無人島にたどり着いた乗組員たちが前向きに暮らしていく実話です。作り物の漂流記であれば、物語をおもしろくするための工夫が随所にありますが、これは実話です。話の進め方もある意味、たんたんと時間を追って書かれています。それでも、ついつい夢中になってしまいました。「事実は小説より奇なり」とはよく言ったものです。まさにその通りです。
この本の中には今の日本人が忘れてしまったかもしれない誇りが、自然と描かれています。無人島に漂流する前に一度海難に遭い、龍睡丸はホノルルにたどり着くのですが、そこでは礼儀正しさ、規律のよさから「龍睡丸乗組員は、世界の海員のお手本だ」とまで言われています。無人島にたどり着いてからも、この態度は助け出されるまで一貫しています。乗組員の中には練習生もいたのですが、彼らは無人島で毎日、勉強もするんですよ。信じられますか。
この本は自信を失いかけている多くの日本人に読んでもらいたいですが、とりわけこれからの日本を背負って立つ子供たちに読んでもらいたいですね。新潮社から文庫本で420円ですから、私のように行き帰りの電車の中が主な読書時間という人はこの文庫本を買えば良いですが、なんと青空文庫にも収録済みです。学校の先生には積極的に教材として活用してもらいたいと思っています。